 |  |
|
午前11時にキックオフされた準決勝の第1試合での宮城県工業vs東北学院の試合は、宮城県工業が前評判そのままの強固な守備と攻撃を兼ね備えたサッカーで東北学院を下し、一足早く決勝の2つの椅子の1つを獲得する中、第1試合では厚い雲に覆われていた空から眩しい太陽の光がピッチに降り注ぐ空模様へと変わり、迎えた準決勝第2試合。
夢の国立まであと2勝。
しかし、1つの敗北は即ち、3年生を擁する現体制での最後の試合を意味するこれ以上に無いシビアなシチュエーションの中、両者が「あと2ヶ月、このメンバーでサッカーを」という共通の合言葉の下で迎えた一戦。
そのセミファイナルの場に姿を現したのは、学校組織の共学化に伴って男子サッカー部が設置されたのが2003年。
それから7つのシーズンを重ねる中で、かつてJ1名古屋で活躍した加見監督が着任したその後は選手の個人技を尊重した技術とパスワークを融合させたアタッキングサッカーで宮城の高校サッカー文化の勢力図を塗り替える新風を巻き起こすも、毎年あと一歩というところまで全国の舞台へ近付くも、その”あと一歩”を超えられず、これまで悔し涙を流してきた歴史に終止符を打ち、全国レベルの舞台で輝く新時代の幕開けを狙う中、チームの掲げる「記憶に残るサッカー」を軸に、悲願の初全国を狙う聖和学園高校。
そしてもう一方は、現在は日本代表として活躍する今野泰幸選手を擁して全国ベスト8へ勝ち進んだ平成12年、そしてベスト16まで勝ち進んだ13年大会以降は6年連続で県代表の座を逃すという”冬の時代”を経験するが、チームの目指す”組織的な守備と、スピードに乗った速攻を融合させたサッカー”が再び復興を遂げた昨年は見事7年ぶりに選手権代表の座を勝ち取り、昨年からの主力が多くチームに残る今季はプリンスリーグで3位の好成績、インターハイ出場はならずも、続く東北選手権では聖和との激闘を制して王座に輝くなど、唸る”堅守速攻”で全国へのリベンジを狙う東北高校。
今季、両者はプリンスリーグ、東北選手権などで4回対峙し、ここまで2勝2敗とまったくの互角。
”攻撃”に特化したチーム作りで臨む聖和と、”守備”に重点を置く東北という対照的なチームカラーに加え、この試合に先発したメンバーのうち、聖和が6名、東北が5名の計11人の元ベガルタ仙台ジュニアユースのメンバーという、血を分けた”兄妹対決”というシチュエーションも垣間見せるなど、様々な因縁が渦巻く様相の中で迎えたこの一戦。
|
東北選手権で準Vに終わったリベンジと共に、ここで最大のライバルを下して決勝に上り詰めたい聖和の布陣には、変則的な4−3−3のシステムの中、GKには守護神の松ヶ根選手が入り、最終ラインには当たりの強いハードな守備を見せる粟嶌篩手と、巧みなカバーリングとスイーピングに長所を置くズ監N描手がCBを組み、SBには右に主将で"菅井ツインズ"の兄の菅井拓選手、左には両足から精度と破壊力のあるキックで突破口を開く佐藤翔選手が入り、ベガルタJY出身の4人で守備陣を形成。
中盤にはアンカーに"菅井ツインズ"弟の菅井慎選手が入り、CHには豪快なドリブルで2列目から突破を仕掛ける大谷選手と、巧みなボールタッチから一気に裏を切り裂くキラーパスでゲームを作るШ出川選手が入る3人。
状況に合わせて流動的にポジションを入れ替える3トップには、小柄ながら懐の深いボールキープと強烈な左足からのシュートで得点を狙う太田選手、チーム1のスピードを活かした高速ドリブルで再三相手のサイドを崩壊させる突破でゴールに迫る嶺岸選手、そして2年生ながら脅威のゴール前でのボールキープ力を軸に、積極的なドリブルでの仕掛けからのシュートや、両足、頭と得点の形を限定されない多彩な得点パターンを持つ門田選手と、聖和の攻撃サッカーを象徴する破壊力抜群の3人が前線に陣取る。
そして、対する東北高校の布陣。
GKにはそれほど上背は無いが、それをカバーして余りある高精度の反応技術が光る厩喟鄙手が入り、東北の生命線である最終ラインには、リベロにセットプレーでの存在感も光る守備リーダーの日野選手、ストッパー的役割にはここ2戦では2試合連続ゴールと存在感を発揮している186cmの長身DF汗仞鄙手と、グど選手が入り、フォアリベロ的位置には、機を見た攻撃参加も光る2部選手が陣取り、表記上は「4バック」となるも、「3バック+1」という独特のブロックを作った守備網を形成する。
中盤には状況に応じてSB的な役割も負うSHには左に庄子選手、右に仮林選手のスピード溢れる2人が入り、中盤の底には洗練された左足からのゲームメイクと、高いキャプテンシーでチームを率いる嶺岸選手、そして豊富な運動量で縦横無尽にスペースを埋める柏崎選手が入る4人。
FWにはチーム1のアジリティ能力を活かした鋭い縦への突破力でチームの”速攻”の大黒柱となるЮ虱嫣手と、いい意味で”東北らしくない”トリッキーで変幻自在な個人技の仕掛けで相手を翻弄する馨島選手が2トップを組む11人。
両者ともに今シーズン磨き上げたサッカースタイルを体現するベストの22名でこの一戦に臨む。
|
|
|
|  |
|
聖和学園高校の布陣は以下の通り。
【聖和学園高校】4−3−3
-------------------9門田----------------------
------------10太田--------11嶺岸--------------
----------------------------------------------
-----7今出川------------------------8大谷-----
------------------6菅井慎---------------------
----------------------------------------------
-14佐藤翔-----------------------------3菅井拓-
------------16赤坂--------5佐藤良-------------
----------------------------------------------
------------------1松ヶ根---------------------
|
東北高校の布陣は以下の通り。
【東北高校】3−1−4−2
------------7千葉---------19小島--------------
----------------------------------------------
-14庄子--------------------------------18小林-
------------10嶺岸--------11柏崎--------------
----------------------------------------------
-------------------5阿部----------------------
--------3岡部-----------------20石川----------
------------------13日野----------------------
----------------------------------------------
------------------17荒川----------------------
|
|
|
 |
 |
 |
 |
|
そして、両者が実力を認め合う犬猿のライバル同士の最終決戦として幕を切った前半戦。
鋭い切れ味を誇る”剣”の聖和か、強固な防御を誇る”盾”の東北がどのような試合の入りを見せるかというポイントに注目が集まったこの試合だったが、先に動きを見せたのは”盾”の東北だった。
菅井慎選手らを中心としたパスの繋ぎから前線での打開を探るも、厳しい逆光の日差しの影響もあってかシュートまでの形を作れない聖和に対し、東北が始めに好機を作ったのは3分。
左サイドに突破を図ったЮ虱嫣手の低い左足でのクロスに対し、ゴール前中央に飛び込んだ嶺岸選手が右足でダイレクトシュートを放つが、このオープニングシュートはGKがセーブ。
聖和にボール支配率では遅れを取るも、Ю虱嫣手のスペースへの突破など速攻から好機を見出す東北。
|
さらに10分には左ゴール前でポストに入った柏崎選手のポストの落としから嶺岸選手がこの日2本目のシュートに持ち込むなど立て続けのチャンスも、これは僅かに枠を捉えるには至らず。
両者が闘志を抑えきれずも、ゲームの中では冷静にファイトする展開で出だしを切る中、序盤の10分では東北にシュートを許す展開となっている聖和だが、試合開始時から常に優勢を保ったボール支配の中からШ出川選手のスペースへのパスや、大谷選手のドリブル突破などで東北の守備網を紐解くように少しずつ攻撃の精度を上げ始めると、ここで聖和が最初の好機を作ったのは12分。
左サイドの佐藤翔選手からのクロスをゴール前中央で受けた大谷選手が強引にエリア内に切れ込んで右足でシュートを強襲するが、これはGK。
続いて13分には佐藤翔選手が左サイドから縦に切れ込んで左足で強烈なミドルシュートを叩き込むも、これも聖和のGK松ヶ根選手が好セーブで点は与えない。
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
|
ここで左サイドを崩して立て続けに2本の好機を作り出すほか、門田選手、太田選手らの個人技を活かしたドリブルでの仕掛けと、Ш出川選手、菅井慎選手を起点としたショートパスを織り交ぜた崩しを見せる聖和に対し、ここで少しの守備の隙を見せた東北だが、その直後にはしっかり聖和のサイドに対して人を寄せて守備の修正を図り、聖和にある程度のボール支配は許すも、しっかりとした守備からシンプルに縦に鋭い速攻を狙うという形で東北が好機を探るという展開の中、両者共にゴール前へのアプローチの方法こそ異なるも、両者の色が分かれたタイトな接戦は続く。
前半も半分の時間を経過し、対照的なゲーム構成の中で互角の攻防を繰り広げる両者のここまでの展開の中、主体的な攻めから先制点を狙う聖和がチャンスを迎えたのは26分。
門田選手の右スペースへの突破のクロスから相手DFのハンドを誘ってFKを獲得。
右ゴール前の高位置で得たFKのポイントから太田選手が左足で鋭く低いシュートを狙うが、これは僅かにポストの右に外れてしまう。
|
依然として半ば意図的に相手にボールをさらすも、要所の局面でボールを奪っての速攻の形を狙う東北だが、その東北がその思惑通りに好機を見逃さずに先手を打ったのは28分。
中盤でボールを持ったЮ虱嫣手の縦へのボールに仮林選手が右サイドへ突破を図り、DFを巧みにかわして右足でクロス。
このボールをPA内でフリーで受けた馨島選手がワントラップからGKと1対1の好機を見逃さず、右足で豪快にコースを狙って蹴り込むボレーシュート。
これがそのままゴール右隅に突き刺さり、これが決まって1−0。
東北が鮮やかなファーストブレイクから貴重な先制点を奪う。
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
|
これでビハインドを追う形となった聖和は、門田選手のポストプレーや、嶺岸選手の縦への鋭いドリブル突破など攻撃の勢いを上げて東北のゴール前に迫る中、30分には佐藤翔選手が右ゴール前で得たFKから右足でシュートを放つなど形を作るも、依然として人数を掛けて守る東北の素早いボールへの寄せの前に流れの中から聖和がシュートの形に結びつけることが出来ない。
結果として、東北が強固な守備からの速攻という狙いが形となるこの前半の展開の中、どうにかスコアをイーブンに戻してハーフタイムを迎えたい聖和が終盤に試合を動かしかけたのは、38分。
カウンターから太田選手がドリブル突破で左PAへGKと1対1の決定機に持ち込み、そのまま左足を豪快に振り抜くシュート。
|
これがGKを超えてそのまま枠を捉えるかと思われたが、ボールの軌道は僅かにクロスバーの上空へと消えてしまい、聖和は惜しくも前半最大の決定的チャンスを活かすことが出来ない。
さらに聖和はロスタイムにも佐藤翔選手の左クロスからШ出川選手が頭で飛び込んでシュートを狙うなど1点を狙って前半最後の猛攻に出るが、これも枠を捉えるには至らず、そのまま40分の笛。
立ち上がりから優勝候補同士の一戦に相応しいタイトなクロースゲームが展開される中、しっかり守って好機を活かすという東北の狙いが形となる中で東北が1点のリードを奪い、前半戦を折り返す。
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
|
堅い守備からの切り替えの速い速攻で東北が狙いを形にする試合運びを見せて1点をリードする中、聖和も持ち前の攻撃サッカーの片鱗を見せるも、東北の堅い守備を崩しきれず1点を追う展開で迎えた後半戦。
後半に入って上空からポツポツと細かい雨が落ち始める中、出だしから気迫を見せて攻勢に出たのは聖和。
門田選手、太田選手を中心にドリブル、個人技の仕掛けを増やして四方から打開を図る中、8分には門田選手のヒールキックにШ出川選手が右PAに抜け出すなど形を作るが、対する東北は最前線からFWの馨島選手も守備参加するなど人数を掛けてブロックを作った守備で素早く人とボールに寄せ、開始10分を経過して聖和に自陣への進入こそ許すも、シュートの形は作らせないという持ち前の堅守を後半に入っても見せると、Ю虱嫣手の縦への突破などで逆襲の機会を探る中、その東北は攻撃でも徐々に勢いを上げて聖和のゴールに迫り始める。
13分には庄子選手がカウンターから右サイドへドリブルで突破を図り、そのまま中央に切れ込んで左足でミドルシュートを狙うが、これはGKがセーブ。
|
さらに嶺岸選手のパスを起点に、馨島選手、Ю虱嫣手らが積極的に敵陣で個人技からの崩しの形を見せ始める東北が攻守共に主導権を掴み始めると、ここで再び試合が動いたのは19分。
聖和のCKから東北のグど選手がヘッドでクリアしたボールを嶺岸選手が受けると、短いドリブルからそのまま敵陣の右スペースに蹴り込むスルーパス。
このボールに反応した仮林選手が鋭い突破から右PAに進入し、GKと1対1の好機から右足を合わせるスライディングシュート。
これがそのままゴールネットを揺らし、東北が「これぞカウンター」たる鮮やかな一撃で2−0とリードを2点に広げる。
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
 |
|
優勢な試合運びでリードを重ねた東北に対し、さらに厳しい試合展開に持ち込まれてしまった聖和は、焦りを少しずつ露にし始めるも、持ち前の個人技とショートパス、さらにダイレクトプレーでの崩しも取り入れてまずは1点へとアプローチを続ける。
Ш出川選手のゲームメイクから、門田選手のポストプレー、大谷選手のドリブルの仕掛けなどで打開を図る聖和は、22分には門田選手の右からの中央突破からのパスを受けたШ出川選手が、左PAへ切れ込んで左足でのシュート。
さらに23分には左サイドからの突破を図った佐藤翔選手が左足でロングシュートを叩き込むなど強気の攻めを続けるが、これは枠を捉えられず。
|
24分にはここで門田選手を下げて佐藤優選手を投入して攻撃に変化を加える中、守る東北も28分には日野選手のヘディングシュート、31分には右CKからのこぼれを馨島選手が右足でシュートするなど、セットプレーから対抗。
聖和は32分にも嶺岸選手に代えて浦愼A手を投入するなどメンバーを入れ替えて窮乏する1点に向けてあの手この手と策を講じてくる中、ついにその聖和の気迫がボールに乗り移って試合を動かしたのは34分。
聖和が敵陣左サイドで得たFKから佐藤翔選手が左足でボールを蹴り込むと、ゴール前中央に飛び込んだ佐藤優選手が身体を投げ出して頭でシュートを押し込むダイビングヘッド。
これがそのまま勢い良くゴールマウスに吸い込まれ、聖和がまさに気迫でねじ込んだゴールで1−2と、ついに1点差に詰め寄る。
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
|
残された時間は5分少々。
あと1点を奪うことで試合を振り出しに戻すことが出来る聖和は、球際でボールに食らいつくようにスライディングなども織り交ぜて果敢にボールを奪い始め、最後の猛攻に出る。
東北は庄子選手、柏崎選手を下げて瀧口選手、星選手を投入して安定を図るも、終盤に勢いを増す聖和がここで大きなチャンスを作ったのはロスタイムの1分。
|
右サイドで相手との競り合いから強引に浦愼A手が抜け出して右足でクロスを上げると、左ゴール前で反応した大谷選手が強烈な右足ボレーシュートを叩きつけるが、これは東北のGK荒川選手が好セーブで防ぐ。
試合もロスタイムが刻々と経過する中、最後まで”あきらめない”と可能性を繋ぐ聖和は、GKの‐哨根選手も自陣を飛び出して攻撃参加するなど、11人全員が敵陣に陣取る気迫の攻勢を仕掛ける。
しかし、こちらも同等の気迫の守備で自陣を固める東北も汗仞鄙手の身体を張ったディフェンスなどで聖和の怒涛のパワープレーを辛うじて交わすと、ついに勝敗を分ける最後のホイッスルが鳴り響く。
|
 |
 |
 |
 |
 |
 |
|
”事実上の決勝戦”と表現してもおかしくない県内最高のライバル対決の最終決戦は、持ち前の強固な守備と機を見た速攻という”堅守速攻”の狙いが見事に形となった東北高校に軍配が上がり、ここまで今季2勝2敗とした聖和との激戦に終止符を打つと同時に、全国の舞台まであと一歩とする決勝への切符を獲得する一戦となった。
誰もが疑わなかった悲願の全国進出が夢へと消える形となった聖和学園だったが、最後まで勝負をあきらめない直向なプレーと、個人技を駆使した創造性豊かな攻撃サッカーの片鱗、胸のエンブレムにも光る「The Memorable Football」は、確かに人々の記憶に深く印象づいただろう。
聖和学園が目指す”愉しいサッカー”の追求と、その方向性を見失うことが無ければ、宮城県のサッカー文化はもっと盛り上がる。
そして、近い将来の全国進出の夢も現実となる日が必ず来るはずだ。
|
あと一歩夢を叶えられなかった3年生にはこの悔しさを糧として次のステージでの活躍を、そして2年生以下の選手たちには”次こそは”という強い気持ちを持って、新たな挑戦へ向けての一歩を歩み出して欲しいと思う。
聖和学園の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
そして、散っていった多くのライバルの想いを背負って決勝へ進んだのは、東北高校と宮城県工業高校。
県内最強をの座に上り詰め、悲願の全国への扉に手を掛けるのはどちらか。
11月7日、場所は同じくユアテックスタジアム仙台。
意地とプライドを懸けた県内の高校サッカーマンが演じる極上のドラマは、どんな結末を見せてくれるだろうか。
|